11月10日 日常の先に潜む死のリスク「2」入浴時死亡 年に1.9万人

朝日新聞2018年11月5日35面:湯船の中 意識失って急死 入浴中に体調を崩し、急死する人が後を絶たない。学会の報告によると、年間の推計死者数は約1万9千人。交通事故による年間の死者数の約5倍。意識を失い、助けを呼ぶまもなく溺死してしまうケースもある。冬に向けて気温が下がっていく今月は、入浴時の事故が増える時期だけに注意が必要だ。
血流の維持 高齢者衰え 愛媛県西条市にある市運営の福祉施設の入浴場。市内の最高気温が22度を超える陽気だった4月30日の昼過ぎのことだ。80代の男性2人が湯船に浮かんでいるのを、浴室に入ってきた利用者が発見した。その後、病院で死亡が確認された。市などによると、浴室は20平方㍍ほど。湯船は、床面積約5平方㍍で、深さは約60㌢。意識を失った理由などの詳細はあかっていない。捜査関係者によると、心臓に持病がある男性が先に体調を崩し、もう1人も何らかの理由で失神した可能性が高い。「一般的に意識障害が起きると声を上げることもできなくなる」。入浴中の死に詳しい堀進悟・元慶応大教授(救急医学)は指摘する。以前、堀さんの病院に搬送され蘇生した男性は「意識がもうろうとして、いい気持ちのまま沈んでいた」と語ったという。
亡くなる理由は多岐にわたる。複数の学会は、風呂場と脱衣所の温度差が引き起こすヒートショック(急な温度変化による血圧や脈拍の変動)のほかにも、熱中症や、心筋梗塞、脳梗塞、アルコールによる影響などの要因を挙げる。多くの場合、これらの結果、意識を医師成って湯船に沈んでしまうことが死につながる。危険なのは冬場だけでない。東京都監察医務院によると、2017年の東京23区の入浴関連死者数では、1.2月と12月の計3ヵ月で637人を占めたが、3月(152人)や4月(147人)、11月(同)も相当の数があった。亡くなるのは高齢者が多い。高橋龍太郎・元東京都健康長寿医療センター研究所副所長によると、湯船に入ると血圧はいったん上昇した後、急に下がる。この時、体は、心拍数を上げて脳への血流を保とうとする。この機能が高齢者は衰えており、意識喪失につながることがある。温度を感じる「センサー」も鈍っており、血圧が上がりやすい高温の湯に入りがちだという。思いもしない場所で大切な人を失うショックは大きい。82歳の母都2人暮らしだった鹿児島県姶良市の男性(50)は昨年の大みそかから元日にかけての夜、自宅の浴槽で母を亡くした。警察から溺死と聞いたが、溺れた原因ははっきりしていない。口べたで、優しかった母。春まで家の風呂に入れなかった。「身近な場所で失うのはつらい。だからといって風呂に入らなければいい、というものでもないし」(後藤泰良、諸永裕司)
 外気温の寒暖差にも注意 事故は、浴室内外の温度差だけでなく、外気温の変化も影響する、との指摘もある。鹿児島大大学院の林敬人准教授(法医学)らは、2010年に鹿児島県で入浴中に死亡した人について調査(死亡日が明らかな181人対象)。1日の寒暖差が15度以上の日は、15度未満の日と比べて、入浴死の発生率が1.5~2.2倍高かった。また、平均気温が前日より3度以上低かった日の発生割合も高かった。これらの傾向は冬だけではなく3~5月にも顕著だったという。
林准教授は「春先など寒暖差が広がりそうな日の前に『入浴注意報』のような形で周知することも有効では」と提案する。安全な入浴を啓発する取り組みもある。大手製薬会社に勤めていた鈴木知明さん(57)=埼玉県深谷市=は、趣味の温泉巡りから入浴について研究するようになり、早期退社。学者の監修を受けつつ「高齢者入浴アドバイザー」の民間資格を創設した。講演では温泉の効能などを説明しつつ、入浴前の水分補給やかけ湯のポイントを伝える。
「高齢の方は、リスクを理解していても『自分だけは大丈夫だ』という『楽観バイアス』が強い。温泉の入り方を学びながら家での入浴方法も変えてもらえれば」と期待する。アドバイザーは現在、約550人。昨年、資格を取った宮城県の元保育士の女性(68)は、湯船で5~10分ど寝ることがあったが、血圧低下による意識障害の可能性があると知り驚いた。「『ウトウト』はいい状態だと思っていた。まさか死と隣り合わせだったなんて」と話す。(岡野翔、高田英)

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