10月5日てんでんこ 音楽の力【27】

朝日新聞2017年9月28日3面:被災者を卒業し、感謝のロックフェス。「町の新しい文化に」 まだ復興半ばの岩手県大槌町。8月6日、魚港の岸壁で、6回目のロックフェスが開かれ、3千人近い観客が熱狂した。SA、横道坊主、ザ・ストリートビーツ・・・。常連のベテラン有名ロックバンドが、「心でつながっている」と声を掛け、演奏後は町民と一緒に飲む。参加するというより、主催しているような空気さえ流れる。
フェスの初回は2012年6月。音楽に救われた青年たちは「被災者を卒業して支援への感謝を伝えよう」と、「おおつち ありがとうロックフェスティバル」と名付けた。とはいえ、運営のノウハウもお金もなかった。盛岡で10年続くフェスを立ち上げた経験を持つ下玉利元一(39)がアドバイスし、「ビーツ」のOKIも自分のライブで裏方を見せて学ばせた。出演交渉は実行委員でライブに出かけて直談判した。大スポンサーもなくイベント会社も使わない。趣旨に賛同した40業者ほどから協賛金を集め、実行委員長の岡野茂雄がデザインするTシャツ類の売り上げなどで、何とか収支を合わせる。
ステージは町民有志で設営し、機材は地元業者から格安で借りる。全国から集まる店は、第1回の実行委員長・古舘王士が全国をキャラバンして知りあいを作ったり、出演者が紹介してくれたりした。
「全部素人で運営するロックフェスなんて他にないから、来た人も協力者も一緒に作っていく一体感を持てるのでは」と岡野。フィナーレは毎回同じだ。震災後Uターンした歌手、NORISHIGE(41)が、がれきから拾ったギターで家族とたき火を囲んで作った「歩きましょう」を全員で歌う。大槌高の生徒が演奏に加わる。「涙あふれても歩き続け、愛する町を築こう」と呼びかける歌だ。「色んなことがあった。これからもある。一緒に歩こう」とNORISHIGE。
歌い終わると、夜空に花火が上がる。実公委が、同じ感謝の思いを持つ町民から集めた募金を秋田県の花火職人に託す。「たまや」の代わりに「ありがとう」とみんなで叫ぶ。無報酬で参加するOKIは「今のちびっこが大人になって『この町はガキの頃からロックンロールが鳴り響いていた』と言われるくらい続いたら最高」。岡野は言う。「軽いノリと強い思いで始めた。新しい文化をつくる、という気持ちでやっている」(東野真和)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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