10月31日 離婚の中で 夢見る熟年

東京新聞2017年10月27日6面:出会って50年 独身同士 2013年のクリスマスイブ前日。65歳の新婦と64歳の新郎が、名古屋市のホテルで式を挙げた。二人とも初めての結婚。長野の県立高校の音楽クラブで出会ってから、およそ50年経っていた。新婦の安藤澄子(69)当時、憧れの的だった。ピアノを奏で、音楽大学を目指す高根の花。一学年下の正明(68)にとっては雲の上の人のような存在で、話したことはなかった。
「かわいくて性格も良くて」数年前、音楽クラブのメンバーが亡くなり、同窓会を開くことになってのが再開のきっかけだ。顧問の先生から「独身同士、結婚すれば」とけしかけられた。正明は保険会社で商品開発を手掛けた医療コンサルタント。仕事人間で、結婚の機会を逃していた。だが、澄子が独身だと聞くと、心が動いた。再会から一年半、憧れの人が妻になった。
澄子はプロの音声家として活躍し、名古屋市の大学で教えてきた。好きな道を歩んだが「人として生まれた以上は結婚したいし、子どもも生みたい」と思っていた。全く違う世界を見せてくれる正明の話は新鮮で驚きの連続。次第に「人がとがめない性格」にひかれ、「結婚なら今からでもできる」と決断した。
10人ほどのこぢんまりした結婚式。二人で1960年代に流行した「ヘイ・ポーラ」をデュエットし、澄子はプッチーニのオペラの独唱曲を披露した。出席者は音楽クラブの仲間など65歳以上ばかり。温かい会だった。
「まあちゃん」「すみちゃん」と呼び合う。「彼女は弱い人に優しい。『残り物には福がある結婚』」と正明。澄子も「いいことも悪ことも共有できてよかった」 正明は1年ほど前、パーキンソン病と診断され、体が少し不自由になった。以前に比べると言葉も出にくく、手が震えるためパソコンのキーが打ちづらい。だが、アシスタントの助けを借りながら、今もコンサルティングやセミナー講師などの仕事をこなす。帰宅すると、澄子が笑顔で迎えてくれるのがうれしい。
「脳に障害があっても歌手を続けている人もいる。病気になっても残っている能力を使えばいい」。澄子の優しい口調が少しだけ力を帯びる。「自分の時間は減ったし、世話も焼ける。だけど、二人の方が楽しい。だから一緒にいるの」(敬称略)

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