10月24日 賠償・補償打ち切り帰還圧力に

東京新聞2017年10月20日29面:「忘却」求める政策 教訓生かさず 原発事故から6年半。被災者をめぐる政府などの対応は「帰還と復興」と「賠償・補償打ち切り」の方向へ加速している。政府は3月末と4月1日、四市町村の「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」の約3万2千人に出していた避難指示を解除。残るは約2万4千人が対象の「帰還困難区域」のみだ。
一方、福島県は3月末、避難指示区域外から避難した自主避難者約2万6千人への住宅の無償提供を打ち切った。2019年3月末には、旧避難指示区域からの避難者が住む仮設住宅約3千600戸分の無償提供も打ち切る。東電から避難指示対象者に支払われてきた一人あたり月10万円の慰謝料も、来年3月分で打ち切られる。いずれも避難者を経済的に追い込み、「早く福島に帰れ」という圧力となる。
安倍首相は今月10日の公示日に福島市内で第一声を放ったが、避難者に対する政策には一切触れず、「福島で開かれる2020年東京五輪の野球・ソフトボール競技会場に足を運ぶ子どもたちが、復興のエンジンになる」などと語った。東京五輪までに事故に区切りを付けるという意図がありありとうかがえるが、野党も含めた他党も、福島原発事故への優先度を落としている感は否めない。
避難者の中でも、最も厳しい状況にある自主避難者らはどう見ているのか。福島市から東京都三鷹市に避難している4児の母・岡田めぐみさん(35)は「原発がゼロになっても、原発事故の被害者はいなくならない。当事者からすると、原発ゼロ政策さえも遠く感じてしまう。『いま求めているのはそこじゃない』という思いだ」と訴える。岡田さんは、国や自治体への支援を求めていく避難者らの団体「避難の共同センター」の世話人を務めている。「生活に困っても、生活保護さえ受けにくい。役所に『福島に除染済の家があるじゃないか』と言われてしまう。でも、例えば、除染済みの私の実家の土壌からは(立ち入り制限される)放射線管理区域の2倍に当たる1平方メートルあたり8万ベクレルの放射性物質が検出された。どうやって帰って住めというのか」
田村市から東京都葛飾区の都営住宅に自主避難している熊本美彌子さん(74)は3月の無償住宅打ち切り以降、都から「このまま居住し続けると使用料が発生します」という警告書が3回届いた。「山形県内の雇用促進住宅に入居している自主避難者には、明け渡し訴訟が起こされたと聞く。各地で追い出しが本格化している」。その上で「事故が起こった際の避難者の生活を支える法制度すらないまま、各地で再稼働が進められている」と憤る。
だが、こうした切実な声は選挙という場に届いていない。避難者らが国と東電の責任を問う損害賠償請求訴訟では、今年3月の前橋地裁判決以降、原告側の3連勝が続くが、国と東電はいまもなお「津波は予測不能」「賠償は十分」という姿勢を崩さない。東電の勝俣久元会長は7月、勝俣氏ら当時の経営陣3人の刑事責任を問う訴訟の初公判で「事故の予測は不可能だった」と無罪主張した。
じこの教訓を生かす構えは見られず、被災者を後景化し、国民に忘却を求めるばかりの政治。元漁師の志賀さんはこういぶかった。「漁に出て田んぼを育て、家族と生きる生活が幸せと、追い出されて初めて分かった。戻りたくても戻れない人もいる。改憲をうたう政党が多い。けれど、原発事故の後始末もできない政治家のとなえる改憲は、そうしたささやかな幸福の根底をも崩していくだけじゃないのか」


デスクメモ:昨年暮れの環境省の推計では、福島県内の除染ゴミは1千600万~2千200立方メートル。うち、来年3月末までに計70万立方メートルを中間貯蔵施設に運ぶ。多くの見積もっても全体の4%。最終処分場はまだ白紙だ。これが復興の現実だ。ウソの横行や息苦しさ。その原点にあの事故がある。(牧)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る