10月24日 新指導要領 教員が読み解き

朝日新聞2017年10月20日29面:重要な箇所に線 本出版 国が決めた新しい学習指導要領を子どもたちの学びの視点から読み直し、必要な箇所に線を引いてみようー。そう考えた北海道の小中学校の教員計50人が分析に取り組み、本として出版した。指導要領の記述が膨れ上がるなか、何が重要かを教員の側から明らかにすることがねらいという。
指導要領は、文部科学省が定めた学校のカリキュラムの基準。小中学校分はこの3月、改訂された。「どんな力を育てたいか」という目標を全教科で具体的に掲げるなど記述が増え、例えば小学校ではページ数が約1.5倍に。どんな場面でどんな活動を用意するかまでふれた教科もある。
最低基準だったはずの指導要領の性格が大きく変わった、と芦別市立芦別小教論の中島彰弘さん(55)は受け止めた。「何ができるようになるかが強調され、子どもの現実から離れている」。だが、「教員にとって指導要領は絶対的なもの。指導要領に即して作られた教科書を日々、進めなければと焦る人が多い」。
では、どうしたらいいのか。中島さんたちはこれまで、数学者の故・遠山啓(ひらく)が唱えた「術・学・観」で授業改革を進めてきた。「術」は計算や漢字、英単語などのスキル、「学」は「文の成分」(国語)や「関数」(数学)、「質量保存」(理科)など学問研究から導かれた教科内容。「観」は子どもが学んだことを総合し、自分で考え出すものだ。
中島さんたちの相談に乗っている東京学芸大の大森直樹准教授(教育学)も、「子どもの学習のステップを追ったもの」として、この考え方に注目。「術」「学」を分析の物差しとして使ってはどうか、と提案した。
大森准教授が中島さんに示したのは、今の指導要領と新しい指導要領を並べ、「術」と「学」の部分に線を引いて吟味するという方法だった。「術」「学」以外の教える目標や具体的な授業方法は国が決めるのではなく、教員に委ねられるべきだと考えたからだ。
最大の成果は「語り合えたこと」 中島さんらは研究活動で知り合った教員に声をかけ、各教科を分担。昨秋からこの春まで「術」を下線、「学」をマーカーで引く作業に取り組んだ。その作業を通じて気づいたのは、新指導要領に今の指導要領の内容がほぼ受け継がれていることだ。「戦後初の第改訂といわれるが、おじけづく必要はないと思った」と訓子府(くんねつぷ)町立訓子府中教論の植野真樹さん(39)。
国語や数学より社会や理科の方が「学」が多いなど、教科の特徴も浮かび上がった。学年をまたいだ内容の繰り返しについても、「定着する」「いや、新鮮さが失われる」と議論が起きた。教科化された道徳には「術」「学」のどの線も引かなった。学術に基づいていないと考えたからだ。
「最大の成果は、小中の全教科を網羅する教員仲間が一堂に会して、指導要領が何を目指しているかや教科内容の関連、量の肥大の問題を語り合えたことだ」と中島さん。「作業は未完だ。子どもと授業をつくるなかで、教室からさらに検討していきたい」と話す。
本は「学習指導要領の読み方・使い方」(明石書店)。現行と新指導要領の対照表に線を引いたもののほか、各教科の解説、教育課程の歴史などを含む。小学校編297ページ、中学校編285ページで、ともにB5判。各2200円(税抜き) (編集員・氏岡真弓)


遠山啓(1909~79)数学者。東京工業大名誉教授。1951年、数学教育協議会を結成して委員長に。タイルの教材で視覚的に計算の仕組みを教え、暗算より筆算を重視する「水道方式」を提唱し、73年には雑誌「ひと」を創刊。競争・序列主義を批判して保護者や市民と教育運動を展開した。

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