10月20日 見落とされる独身女性

朝日新聞2017年10月17日33面:非正規・年重ね「『活躍』というが・・」 非正規で働く独身の中高年女性たち。毎日の暮らしに精いっぱいで、将来に不安を抱える人も少なくありません。東京都中心部にある地上44階建ての高層オフィスビル。川崎市に住む茂木直子さん(44)は今夏から、ここに入る外資系企業に勤めている。フルタイム勤務の派遣社員で時給は1800円。契約は1カ月ごとに更新される。
2012年までの5年間、同じビル内にある英国系銀行の契約社員だった。当時は年収約480万円。やりがいはあったが、突然、事業の撤退で職を失った。「いくら頑張っても高卒で正社員は無理だと悟った」。元同僚とすれ違うと、今も心がうずく。
小劇場や語学学校で正規雇用だった20代は倒産したり厳しいノルマを課せられたり。30代は正規雇用を目指したが、10社以上を渡り歩いた。4年前、都内で暮らす母(75)が認知症を疑われ、実家に戻った。母の通院の付き添いで月に5日間休んだ翌月、派遣契約を打ち切られた。母の介護と家事に追われ、夜中の過食が始まった。「母を殺すか、自分が死ぬか」と思い詰めたのは実家に戻った半年後。郷里の福島県で農作業に励む父(75)が帰ってきて、実家を離れた。
現在の月収は約25万円。社会保険や税金を引かれ、約6万円の家賃や約2万円の交通費に加え、携帯電話代や通信大学の学費などを払えば貯金はできない。「職が不安定なのに税金は取られ、親の介護も期待される。『女性活躍の推進』というけれど、正社員しか念頭になく、私は存在しないかのように扱われる」
 「稼ぎ主は男性」の陰で 衆院解散に際し、安倍晋三首相は「社会保障を全世代型に転換する」と打ち出した。各党の公約には若者や子育て世帯向けのメニューが目立つ。高齢者と若者世代のはざまで見落とされがちなのが、未婚の中高年の存在だ。生涯結婚しない人は増え、35~44歳の「非正規シングル女性」は2000年代初めに比べて約3倍になった。横浜市男女共同参画推進協会は大阪市や福岡市の研究者の協力を得て、35歳~54歳の非正規シングル女性261人にアンケートを実施。昨年3月にまとめた結果では6割以上が「正社員として働ける会社がなかった」と答え、7割は年収250万円未満だった。
同協会の植野ルナさん(42)は言う。「収入が低いのは『男性稼ぎ主モデル』が前提の賃金体系だから。正社員並みに働いても将来に不安を感じる独身中高年女性層に光が当たらない」
今月2日、東京都の女性(56)は都内で開かれた「ひきこもりUX女子会」という催しに初めて足を運んだ。曇り空なのにサングラス。「2年前に無色になってからほとんど外出できず、人と会うのが怖くて」と明かした。
20代で離婚した後、25年間同じ会社で正社員として働いた。職務を誠実にこなしてきたが、2年前に会社の粉飾決算が発覚。上位の代わりに責任を問われ、うつになって会社を辞めた。「職を失って、『なぜ私はこんなにダメ人間なのか』と苦しんだ」 元同僚とは縁が切れ、学生時代の友人は主婦ばかりで会う気になれない。近くに住む両親は80代になった。焦っていたとき、参加したのが今回の催しだった。昨年6月から毎月、東京、大阪などで開かれ、生きづらさを抱える女性たち数十人が集う。「私だけじゃないと思えたのは大きな一歩。アルバイトを探し、社会との接点を取り戻したい」と思う。(高橋美佐子)

 

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