10月2日 人生の贈りもの 作家 浅田次郎【6】

朝日新聞2017年9月25日33面:性に合いすぎた自衛隊生活 僕は三島さんの死に方っていうのが、全く納得できなかった。だから自衛隊に入った同機は三島さん。自衛隊に行けば分かるだろう、と、冷静に考えてなかったかなあ。確かにちょっと感情的でした。《高校卒業後、大学に進まずに陸上自衛隊に入隊した》
自衛隊は体動かすのが仕事でしょう。高校時代は体育もサボってたけど、なんだか体になじむんだ。あれ?
指示目にやってたらインターハイだったのかよ、と思った。それに内務っていうのがあって、靴をきれいに磨くとか、毛布を真四角にたためるとか。これって、兵隊の資質。僕は、もうジャガーを15万キロ乗っているくらで。好きなんだよ、メンテナンスが。今日も洗車してきましたよ。最後は綿棒ですからね。ドアの取っ手と、ミラーの回り。水滴があるのが嫌なんだよ。手ぬぐいじゃ落ちないんだ。全部やって、そーっと手を離して、ほほうっていうね。了っていう、最後の字を書き入れた感じですかね。
あと、不器用な人は駄目んだよ、兵隊は。どんなものでも分解して組み立てるっていうことができないと。万年筆も、すごいのはスポイトでインク入れるのがある。これ、不器用な奴は使えないでしょう。
その三種目をクリアして、なんて良い世界だろうって。自分のためにある職場じゃないかと思った。2年でやめた理由はそれ。このまま行っちゃうと思った。やめるとき、みんな愕然としたからね。成績もよくて、嬉々としていたあいつが、冗談だろうって。
小説家になるつもりではいたからね。でも迷った。だから、ずっと入った同期を思いだそうとしていたよ。上官には、もう色んな手練手菅を使われて引き留められた。でも最後は中隊長だった人がすっぱいり認めてくれた。
小説の神様っていると思う。僕が口を開くより先に、中隊長が「よし」って言ったんじゃないかなって気がするんだ。結局、中隊長とは一生のつきあいになりましたね。(聞き手 高津祐典)

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

ご予約・お問い合わせはお気軽に

Tel0120-740-276

〒352-0011 埼玉県新座市野火止8-14-29

ページトップへ戻る