10月10日 人生の贈りもの 作家 浅田次郎【12】

朝日新聞2017年10月3日30面:小説の神様からもらった視点 ≪「蒼穹の昴」シリーズは、今も執筆が続く≫ 難しい時代を扱っているけれど、複雑な背景を分かりやすく書くのが今の使命です。例えば張作霖。破天荒な人間を、分かりやすく書くには張作霖の支店は一つも入れない。周りからスポットライトをあてていく。彼は語らないのに、浮かび上がってくる。ストーリーはいつでも考えられる。だから世界を考える。『マンチュリアン・リポート』は張作霖爆殺事件を誰の視点で見ればいい、どうすれば悲劇的な美しさになるんだと考えていました。その時、視点を機関車にすればいいんだと。これは小説の神様からもらった。あれは考えつくんじゃなく、もらうんだ。
政治背景とか、誰がその列車に乗って降りてというのを調べる。ミステリー仕立てにしたいけど自分はそういう作家ではない、このままではと思っていると降りてくる。最善の調べ方、大げさに言えば研究して取材する。そうじゃないと神様はくれません。『蒼穹の昴』も、当時は中国に行かずに書いていました。
≪他に幕末、戦争小説が三つの大きな島と表現する≫ いつの世にもなぜかいる新撰組オタク。『壬生義士伝』は僕が28歳か29歳のときに、三百数十枚分を書き上げてる小説。20年後ぐらいに1200枚にした。・・・元の原稿は棺桶に入れさせて頂きます。
新撰組にひかれるのは、いてもいなくても歴史が変わらなかった人たちだから。世の中、みんなそう。ただ、歴史の中の1人には違いない。そこがいい。斎藤一が好きだな、ニヒルで。吉村貫一郎も好きだけど、せこいから。戦争小説は、戦争を語り継ぐという大げさなことは考えていません。自分は体験していないので、おこがましい。でも日本の戦争文学は、内面を見つめ、立場の矛盾を細かく書いた素晴らしい小説がたくさんあります。それに、せめて文学だけでも戦争に反対し続けるのが大切なこと。いつの時代にも、文化は政治の母でなくてはなりません。(聞き手 高津祐典)

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