10日 オトナになった女子たちへ 益田ミリ

朝日新聞2017年7月7日25面:短冊に書く願い事 七夕飾りを見かけると、短冊になにか書きたいと思う。しかし、いざ、「ご自由にどうぞ」と短冊が置かれているスーパーの一角に近づいてみれば、まごついてしまう。家族の健康。あるいは宝くじに当たりますよう、習い事が上達しますようお願いするのもよいだろう。
とはいえ、七夕は毎年あるのだし、今までにない願い事もよいのではないか。たとえば、歌がめちゃくちゃうまくなるとか? 音痴ではないけど、お上手ですねと感心されることもない歌唱力である。そんなわかしが、ある夜、突然、カラオケルームの歌姫になるというのはどうか。ミリちゃん、すごい!
やんややんたと褒められ、これまでのわたしは、本気を出していなかっただーけ、とばかりに歌い上げる。想像しただけで気分が明るくなってしまった。
カラオケといえば、もう歌いたいのを歌えばいいんでないの、という感じである。食事のとの二次会。みんなでぞろぞろと向かうカラオケルーム。カラオケという名の「空気をよむ」時間ともいえる。どういう曲をチェイスするのが、今、この瞬間、重要であるか。場の空気をよむ者がカラオケを制するとまでは言わぬが、そこそこ気を使って選曲さざるを得ないことは確かである。
「お、いいねぇ、これ聴きたかったんだよね」 自分が入れた曲を褒めてもらいたい。あるいは、そこにちょといいなと思っている男性がいれば、かわいいと思われるような曲を選びたい。あれこれ考えるのもまた楽しかったけど、今もう、「その曲、誰の?」
と聞かれるような、アルバムの中の1曲を好きに歌える仲間とのほうが気楽だった。そうか。そん気楽なカラオケなら自己流でもいいわけで、うまくなくてもかまわないのである。
となると短冊にはなにを? 「明日、いいことがありますように」。期限を決め、明日を待ち遠しく思うながら一夜を過ごすのも悪くないかも。と同時に、切実な願いがない、今、このときの幸せを、しっかり噛みしめなければならないとも思う。(イラストレーター)

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