1月9日 メディアと世界 揺らぐ報道の自由

東京新聞2019年1月6日4面:速報やめ「読者第一」 「米国第一」を掲げるトランプ大統領の一挙一投足が、日々のニュースをにぎわす米国。ニューヨークの中心文からやや離れた築110年のビルで、オランダ生まれのインターネットメディアが「読者第一」の新たな報道を世界に広めようとしている。「トランプ氏を連日追う必要があるのか。私たちは追いかけない」。「コレスポンデント」(英語名、The Correspondent)のロブ・ワインベルグ編集長(36)は言い切る。
「特派員」を意味するコレスポンデントは2013年、オランダで、ニュースのあり方を巡る意見の相違から全国紙を辞めたワインベルグ氏らが創設した。購読者は当初の1万9千人から現在6万人に。オランダ語版に英語版が本格稼働する。運営費のほぼすべてを購読料でまかない、報告は一切ない。速報(Breakig News)を競う既存の主要メディアに対抗し、合言葉は「Unbreaking News」。読者本位を徹底する10か条の理念を掲げ、目先の刺激的な動きを伝えるのではなく、読者とともに問題の本質を掘り下げる。何を取り上げるべきか。そこから読者に問う。例えば医療問題。購読者である臨床医が、仕事の4.5割を書類作成に費やしていると内情を明かす。医療制度の根幹に関わる問題ととらえた記者が取材し、記事として投げ返し、さらに意見を募る。一方的に読者に情報を提供するのではなく、双方向のジャーナリズムの具現化だ。「ちょうど人類が知恵を共有して発展してきたように」
英語版への挑戦で、こうした新たな仕組みを世界中の人々と共有することを目指す。創設資金としてまず250万㌦(約2億7千万円)を募り、先月中旬までに4万6千人から目標を上回る260万ト㌦が寄せられたという。期待は既存メディアに対する不信の裏返しだ。自身に批判的な報道機関を「国民の敵」と攻撃するトランプ氏。それは「言論の自由への挑戦」ともいわれる。ただ、米ギャラップ社の世論調査では、18年の信頼度は新聞が23%、テレビニュースが20%、それぞれ20年前より10ポイント下がり、大統領の信頼度37%にすら遠く及ばない。
「その日の例外的な出来事が中心で、毎日起きていることを報じない。万国共通のニュースの問題だ」とワインベルグ氏。トランプ氏が懐擬的な立場をとる気候変動問題でも、トランプ氏の発言に比べて「実際の影響や温暖化そのものの実態は十分報じられていない」と疑問を投げ掛ける。センセーショナリズム(扇情主義)や既存概念への固執も、今のメディアが克服すべき課題とみる。「人々が互いに建設的で洞察的な対話を重ね、より良い世界につなげていく。それがコレスポンデントのあり方だ」。ニュースとメディアの役割を再定義する試みは始まったばかりだ。(ニューヨーク・赤川肇)

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