1月9日 ボランティアが築く未来

東京新聞2019年1月6日23面:ぬくもり届け続けたい お気に入りのテレビドラマ「相棒」の再放送を楽しむ夕方。「ピンポーン」と鳴る呼び鈴に小笠原鞠子さん(89)=東京都国立市=の顔が和らいだ。玄関先に笑顔の配達員。「寒くなっから気を付けてね」と、ぬくもりの残るお弁当を渡された。この日はてんぷら、サツマイモ煮、春雨、ギョーザだ。地元NPO法人「すずらん」には、家事がつらくなった2年前から毎日弁当を届けてもらう。
代金は500円。夫を18年前に亡くし、2人の子どもは都内にいる。急病になったりけがをした時、すずらんの訪問があれば、気付いてくれる。夜中の電話相談にも応じてくれる。「地域にあるだけで安心よ」 先日、同年代の知人と「休眠預金」の話をした。「覚えのない通帳が出てきたなんて話はよく聞く」。各家庭で忘れ去られた預金を集め、今後NPOの活動に使われるという。「すずらんみたいなところに使われてるんでしょ。いい制度だわ」と小笠原さんは好意的に受け止めた。10年以上取引がなく、預金者の住所が不明になった休眠預金。国内で年間約700億円生まれる。昨年1月に休眠預金活用法が施行され、その資金を預かる指定活用団体を通じ、今年秋からNPOなど公益活動団体に交付金が出る。しかし、すずらんの高橋力理事長(55)は「うちには交付されないかな」と嘆く。活用法の基本方針には、交付対象について「革新性」「社会的インパクト」の文字が並ぶからだ。
1987年に拓殖を始め、今は1日100食を高齢者に届ける。弁当代はもらうが、安否の確認や夜間の電話度相談はボランティア。高橋理事長は「革新性はないよ」と苦笑いする。もともと有志のNPOが「多様化する社会課題を民間が解決できる」と働き掛け、議員立法につながたった。韓国や英国に前例があり、市民活動の拡大が期待された。昨年3月に基本方針が決まると、一部のNPOを反発した。「地道に活動してきた団体が排除される」。制度の見直しを迫る「現場視点で休眠預金を考える会」が立ち上がり、現在98団体が賛同している。
日本NPO学会元会長の田中弥生さん(58)も「市民と地域の課題を一つ一つ解決していくがNPOの良さ。社会的インパクトの物差しのみでは測れないところがある」と指摘する。国内のNPOは約5万団体に上る。予算や活動規模、職員数など形態は千差万別。地域それぞれ特有の事情もある。今後、国が選定する指定活動団体に対し、「非営利活動の多様性を配慮し、対象基準をさらに議論してから交付を始めてほしい」と求める。地域のお年寄り、引きこもりの若者、貧困家庭の子ども・・。NPOは目の前の課題に就き動かされるように活動している。「市民に望まれる形で運用しないと。もともと一人一人の預金なのだから」

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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