1月4日 亡骸を追う

東京新聞2017年12月29日26面:続く1円落札なぜ 今年8月末、福島市で、市営斎場から出る残骨灰の処理業者を決める指名競争入札が開かれた。市役所3階の入札室に集まったのは17業者。各社の担当者が封筒を差し出し、職員が順番に入札額を読み上げた。結果、全社が「1円」。職員は事務的な口調で告げた。「抽選で落札者を決定します」残骨灰の処理を毎年発注している福島市では、記録が残る2003年度から1円での落札が続いている。東日本大震災で被災した自治体からの火葬を受け入れた11年度も、業者はその残骨灰を1円で落札した。
入札は最低価格を提示した業者が落札するルールだ。横並びの場合はくじ引きで決める。市環境課の宍戸亮課長(55)は「1円でも、手続きにのっとっている」と説明するが、なぜ1円なのか、市民に疑問を持たれてもおかしくないと感じている。1円での落札や随意契約は、福島だけではなく全国各地で相次いでいる。横須賀、静岡、岐阜、富山・・。函館や八王子などの契約額は「ゼロ円」だった。
関東地方に本社がある処理業者は、複数の都市の残骨灰処理を1円で請け負っている。処理が終わると、それぞれの都市から1円ずつ振り込まれる。社長は1円で仕事を受ける理由を「他都市の入札要件にある『過去の実績』をつくるためだ」と説明する。ただ、社長は「1円でも利益は出る」と明かす。「残骨灰から得られる金は、遺体1体当たり約1グラム」と話す業者もいる。2000年に1グラム約千円だった金の小売価格は、16年に約4500円まで高騰した。処理費用を丸ごと負担しても、有価物を売ればもうけは十分出るという。
1円で落札が10年以上続く浜松市は、業者が有価物を得ていることを知っていた。本年度からその有価物を市が回収して売却し、収入に充てる方法に切り替えた。厳しい財政を補うためだが、「安い委託料適切に処理してもらえるのか」との懸念から、1円入札に歯止めをかける狙いもあった。ところが、4月26日に北区役所の会議室であった指名競争入札で、区民生活課の小林正美課長補佐(58)は目を疑った。発注方法の見直しで「1円入札はなくなるはずだ」と考えていたが、結果は16社のうち12社が「1円」。参加業者の8割近くが再び1円でそろったことを、今でも不思議がる。
有価物を市に返す仕組みなのに、なぜ1円なのか。入札で1円を示した12社のうち1社の社長は「赤字でも、新規参入業者に仕事を取られたくなかった」と話す。一方で、他都市に金などを返納している複数の業者らは「誤差」の存在を口にする。実際にハイカラ回収できた有価物の量を自治体には少なめに報告し、残りの有価物を自社の利益にする中抜きの示唆。「自治体が納得しそうな量を返している」と明かした業者もいる。
浜松市は1円入札を防ぐため、人件費などを考慮した最低制限価格を来年度から設ける検討を始めた。国は統一的な基準を示さず、適正なコストや発注方法の判断をすべて自治体に委ねている。

朝日新聞ASAの伸光堂西部販売 森林文化協会

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