1月30日 平成とは 金融危機「4」

朝日新聞2019年1月24日夕刊10面:「ご解約ですか」に寒け 東京・八重洲にあった安田信託銀行本店1階のドアを開けると、行員が青ざめた表情で尋ねてきた。「ご解約ですか?」 ロビーは客でごった返していた。取り付けだ。そう思った瞬間、血の気がひいた。1997年11月26日のことだ。北海道拓殖銀行と山一証券の破綻に続き、この日の早朝、仙台の徳陽シティ銀行が破綻した。それを合図に、全国の多くの銀行に客が殺到した。とりわけ安田信託は経営不安がささやかれており、私が詰めていた日銀記者クラブに札幌や名古屋の同僚から「支店に客が殺到している」との情報が届いた。あわてて出向いた本店で、現場を目の当たりにした。日本銀行や東京証券取引所の記者クラブでは朝から晩まで、銀行や証券会社の緊急会見が続いた。経営悪化が取り沙汰されての株価急落に直面し、うわさを否定したり、業績改善のリストラ策を発表したりした。
事ここに至って事態の深刻さがのみ込めた。「このままでは日本経済は恐慌状態になる」何をどう報じるか。危機を抱えて年が明け、経済部長やデスク、論説委員、一線の記者らが集まって議論した。政府が検討していた銀行救済への税金投入をどう考えるかが最大のテーマだった。金融機関への公的資金の投入は不人気政策だ。6850億円を投入した2年前の「住専問題」が尾を引き、新聞各紙はどこも銀行救済に厳しい論調だった。朝日新聞も論説委員室も、反対論を掲げた社説を何本も書いていた。取り付けを実際に見ていた私は「今は税金をつぎ込んででもパニックを止めないと」と主張した。だが論説委員たちは納得しない。
らちが明かないとみた経済部長が私に言った。「それなら君が、私は考えるという解説記事を自分で書けばいい」数日後「公的資金投入は『投資』という著名記事が載った。(編集委員・原真人)

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