1月28日てんでんこ 奥尻から【19】

朝日新聞2018年1月19日3面:「自然や人の良さに気づいた」。Uターンした30代が観光を担う。 北海道の奥尻島中心部にあるフェリー乗り場に、ハートランドフェリーの「カランセ奥尻」がやってくる。昨年9月に就航し、対岸の江差町との間を行き来する。冬は1日1往復、観光客は夏場の1割ほどだ。フェリー乗り場の2階に2016年8月、イタリアンレストラン「Bella vista(ベラ ヴィスタ)」がオープンした。経営する工藤哲史(37)は、大阪や札幌の料理店で働きながら毎年お盆には島に帰ってきた。民宿の廃業、衰退する漁業。「このままだと島に帰って来たくても働く場所がなくなってしまう。島の力になりたい」とUターンを決めた。
観光は島の産業の一つだ。約20軒の民宿・旅館がある。観光客は、復興支援もあって03年度には約5万8千人と地震前の水準に戻ったが、団体客の落ち込みが進み、昨年度は2万7千人にまで減った。16年3月に開業した北海道新幹線の効果も見えない。奥尻町は昨年10月、「奥尻島体験観光トライアル委員会」を立ち上げ、冬場の観光対策に動き出した。フェリーの欠航で取り残された旅行客を町民がもてなす鍋パーティー、雪上を歩ける「スノーシュー」でのハイキングなどを企画している。委員長の工藤は「手つかずのものがまだある」とまだ満足しない。
奥尻島観光協会次長の佐野由裕(36)は札幌のIT会社で働いていたが、9年前に島に戻った。「外に出て、島では当たり前だと思っていた自然や人の良さに気づいた」14年6月、月夜に走るムーンライトマラソンを開いた。先に始めた沖縄の離島、伊平屋村とはライセンス契約を結んだ。前夜祭、後夜祭を含めて2泊3日、約500人のランナーが島民と交流を深めた。漁師が船を出し、大漁旗を振って応援してくれた。
佐野が重視するのは、団体客ではなく、島にひかれるリピーターだ。ブナ林の散策や自転車での島めぐりなども始めた。今年度、観光客はすでに3万人を超えている。4年ぶりだ。佐野は手応えを感じている。札幌市の会社員松坂孝一(42)はマラソンにも参加した常連客だ。毎年5月1日の「しまびらき」にかけつける。「何もないところが、この島の気力。のんびりした島時間もいい。今持っているものを磨いてほしい」。「奥尻マニア」というホームページを立ち上げ、島の話題を発信している。(大久保泰)

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