1月28日 平成とは 金融危機「2」

朝日新聞2019年1月22日夕刊12面:「絶対に書かないで」 三洋証券が会社更生法を申請したのは1997年11月3日。土日から続く三連休の最終日だった。経営陣が東京証券取引所で倒産を発表していた夜、そこから徒歩10分ほどの日本銀行本店でも、理事の本間忠世が会見い臨んだ。私は、気になっていたことを質問することにした。市場取引を仲介する会社の幹部が「コール市場でデフォルト(債務不履行)が起きたら大変なことになる」と数日前に警告してくれたからだ。コール市場は、金融機関が日々の資金繰りの調整のためお金やりとりする取引の基盤。担保はとらず、お互いの信用だけで一晩の貸し借りが成り立っている。
日銀は「この市場で絶対に貸し倒れは起こさない」と金融界に宣言していた。法制度があったわけではないが、こうした当局の言動が少しずつ銀行の「不倒神話」をつくりあげてきたのだろう。ここで焦げ付きが起きたら日銀の信用問題だな。そう思いつつ関係者の警告を「初のデフォルト」とメモ帳に書き留めていた。短刀直入に質問した。「コール市場で初のデフォルトになるようですが、どんな影響が?」 破綻処理の問題を担当する本間は、私の質問にいつものように表情ひとつ変えずに答えた。「ごく一部の無担保コール(三洋が他の金融機関から借りたお金)で今後、債務の不履行が生じる可能性があります」「これからどんな金利形成や取引手法が出てくるか、きめ細かくウォッチします」日銀はそれほど大問題だと受け止めていないのだろうか。そう考えながら会見場を出たら、広報課長が追いかけてきた。上階まで連れていかれ、会議室に招き入れられるや、こう言われた。「コール市場のデフォルトを大きな記事にするの? そんなことをしたら市場に不安を呼ぶだけ。絶対に書かないでください」やはり、大変なことが起きるのかー。
=敬称略 (編集委員・原真人)

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