1月25日てんでんこ 伝える「10」アナログ

朝日新聞2019年1月20日3面:独自番組は、高校生の本音トーク、地元弁護士の相談、きょうの宮古の海・・。 岩手県宮古市の「みやこハーバーラジオ」のスタジオは、駅前商業ビルの2階にある。ガラス越しに買い物客が手を振っていく。主な独自番組は、高校生の本音トーク、地元弁護士の相談、きょうの宮古市の海、宮古弁とは・・。スタッフの6人と考えるのは、社長の及川育男(63)や放送局長の坂本和(53)たち。時には出演し、取材に同行するが、本業は電気設備会社会長、製材業社長だ。地域メディアを持ちたい。及川らの20年来の夢だった。青年会議所仲間の建設会社社長やタウン誌編集長と語り合ってきた。
岩手県は、首都圏の1都3県を合わせた面積より広い。県庁がある内陸と沿岸は、歴史も文化も経済も異なるのだ。2006年ごろ、微弱電波によるミニFMの試験放送を始めた。東日本大震災時は出力を上げ、高校総体の中継準備中だった。「今すぐ始めた」。市長の山本正徳(63)に直談判し、11日後に臨時災害FMが始まった。中身はぶっつけ本番だった。避難者名簿、尋ね人、水や食料の配給、商店の再開・・。目の前の情報を次々に読み上げた。それこそ、東京や盛岡のメディアでは伝えきれず、孤立した被災者が求めていたものだった。「みんなが支えてくれた」。及川が熱く振り返るのは、続々と集まったボランティアたちだ。高校の放送部員から司会業、映画館支配人、NHK職員、沖縄のアナウンサー、春休みの高校生ら。スタジオ隣の部屋に泊まり、取材に歩き、放送原稿を作った。
反響は海外からもきた。米紙ニューヨーク・タイムズやドイツのテレビが取材にきた。「IT先進国の日本の被災地で、アナログのラジオが力を発揮している」。感激したドイツのラジオ局社長が1年後、及川や坂本らを招待し、表彰するおまけまでついた。13年に民間のコミュニティーFMに移管し、エリアは市内ほぼ一円に広がった。設備費用の1億9千万円は国の補助金などで整えたが、運営は自分たちで賄う。市も委託料約1千万円で支えるが、ほぼ同額を約100社から得る。この体制でいつまで続けられるか。17年の調査で市民500人に聞いたところ176人が「聴いている」と答えた。熱気はまだ残っている。「次の世代に残すんだ」と、及川は決意を語る。 (伊藤智章)

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