1月25日 奨学金「不当」に回収 

朝日新聞2019年1月19日1面:保証人へ過大請求「法解釈誤った」学生支援機構 奨学金の返還をめぐり、日本学生支援機構が保証人に半額の支払い義務しかないことを伝えずに全額を求めてきた問題で、機構は取材に対し、その後に取った対応の中で、過大請求によって一部の保証人に不当な回収をしていたと明らかにした。寄稿は「法解釈を誤った」と認め、保証人に謝罪したうえで、取りすぎた分を返金するという。▼38面=半額返したのに 朝日新聞は昨年11月、機構が過去8年間に延べ825人の保証人に、全額の支払いを求めたと報じた。これを受けて機構は、半額しか支払い義務がないとする「分別の利益」を保証人が主張した場合、返還を終えた人や裁判で返還計画が確定した人は減額しない一方、機構と協議して返還中の人らには応じる方針を示した。ただ、減額は主張時の「残金の半分」とした。この点について、取材した法学者10人の大半が「法的に誤りで過大請求になる」と答えた。朝日新聞は機構に説明を求めていた。機構によると、奨学金を借りた本人の未返還額の半額を超えて返している保証人が、主張後に支払った分を返金する。過大請求や不当回収をした数や金額は精査中。ただし、半額を超えていても、主張前の分は「弁済は有効で債務は消滅している」として返金しない。機構の大谷圭介理事は「法解釈が不適切で不当な回収だった。今後、分別の利益の主張があれば、本人の未返還額の半額しか求めないよう改める」。一方で、「分別の利益は保証人から主張すべきだ」とする見解は変えず、機構から積極的に伝える考えはないという。山野目章夫・早大法科大学院教授(民法)は「保証人に分別の利益を知らせずに全額払いを求めていたことが判明した後に謝った法解釈で『不当利得』を得ていた事実は重い。奨学金事業への信頼を損ないかねない」と話す。(諸永裕司、大津智義)
同日38面:奨学金半額は返したのに 教え子の保証人さらに請求された 未返還の奨学金の半額を返し終えたのに、まだ支払いは続くのかー。保証人には半額しか支払義務がないことを知らせずに全額を求めてきた日本学生支援機構。報道で指摘された後に、過大請求による不当な回収をしていたことが明らかになった。
残金の半分も 昨年12月中旬、北海道の男性(73)のもとに封書が届いた。日本学生支援機構からだった。男性は、かつて勤めた夜間定時制高校で担任をした男性生徒の保証人になっていた。すでに約64万円を払い、教え子が返せなかった約93万円の半分を超える。保証人の支払い義務が2分の1なら、これ以上払う必要はないのではないか。機構に尋ねてから1ヵ月半、待ちわびた回答だった。
<今後の返還につきましては請求額(返還未済額)の1/2となります> 残金約29万円の半分をさらに払うよ求めていた。なぜ、残金の半分なのか。説明はなかった。6年ほど前、機構からの通知で、教え子の延滞を知った。通知にある道内のアパートを訪ねると、電気の消えた部屋で教え子が寒さに震えていた。「先生、迷惑かけてすみません」。札幌の短大を卒業後、消費者金融からの借金がかさんで自己破産し、連帯保証人の父親は死亡していた。
「2.3日食べていなんです」「もう死にたい」男性はコンビニで電気料金を建て替え、食堂でパスタを食べさせ、小遣いを渡して別れた。まもなく、行方がわからなかくなった。男性は1964年、夕張の高校を出て上京。住み込みで働きながら大学に通い、教師の資格を取った。「東京での4年間は財産です。あの時間が僕の人生を作ってくれた」。当時の日本育英から受けた月8千円の奨学金に支えられた。今は、年金と警備員のアルバイトの月収20万円ほどで、妻と暮らす。それでも、教え子の代わりに毎月8600円を欠かさず振り込んできた。「奨学金は、返したものが次世代の原資になる。それがわかっているから、苦しくても払ってきたんです」「根拠わからぬ」 12月中旬に機構から送られてきた封筒には、もう1枚髪が入っていた。<不履行の場合は延滞金の減免は認められません> 機構と協議して、自分が返す代わりに約53万円の延滞金は免除してもらう、との条件で合意した6年前の文書だった。払わなければ、さらに重荷を背負うことになる。2日後、男性は8600円をまた振り込んだ。「もう半分以上返したのに、機構はまだ払えという。根拠もわからず、信用できない」。これが、自分の道を開いてくれた育英会を継ぐ組織なのか。怒りとともに、やるせなさが募る。まだ、男性のもとに返金の知らせは届いていない。
「機構の都合よい解釈」専門家 未返還の奨学金をめぐり、半額しか支払義務がないとする分別の利益を保証人が主張した場合、その時点の「残金の半分」を減額するという日本学生支援機構の方針について、朝日新聞は専門家に見解を求めた。一昨年の民法改正で法制審議会の委員や幹事を務めた法学者18人のうち10人が取材に応じ、このうち9人が「誤り」と指摘した。松岡久和・立命館大教授は「借りた本人が返せない場合、機構は残りの全額を払うよう保証人に求めることはできる。だが、保証人の支払い義務はその半額を超えず、分別の利益をいつ主張するかによって変わるものではない」。野村豊弘・学習院大名誉教授は「機構にとって都合のよい解釈ではないか」と述べた。一方で、「分別の利益については定説がない。当初、機構が考えたように解釈できる可能性もある」とする学者も1人いた。(諸永裕司)
*分別の利益 民法では、連帯保証人も含めた複数の保証人がいる場合、各保証人は等しい割合で義務を負う。奨学金の人的保証(父か母が連帯保証人、4親等以内の親族1人が保証人)では、保証人の義務は半分になり、残りは本人や連帯保証人が負う。

 

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