1月25日 私の東京物語 安藤優子

東京新聞2018年1月17日30面:学生街の喫茶店 これまで書いていて気がついた。私の東京物語はすべて「食」の記憶につながっている。よほど食いしん坊なんだと自分でも可笑しくなってしまう。東京のどこかの風景を思い出すと、自動的にそこには食べ物がくっついてくる。いや、食べ物が先に浮かんで、そうそうと、街の記憶が呼び戻されるという順序だ。今もコーヒーとピーナツの組み合わせがぽーんと頭に浮かんできた。そう、喫茶店の風景だ。場所は神田・神保町の喫茶店「さぼうる」。60年以上続く老舗中の老舗の喫茶店だから、ご存じの方も多いと思う。やや暗めの木とれんがの壁の店内、半地下や2階がある造りで、なんとなく穴蔵のような雰囲気が妙に落ち着くのだ。
高校生にはちゅっと敷居が高かったように思うから、たぶん大学時代にせっせと通ったのだと思う。コーヒーを頼むと白い器に入ったピーナツが出てきた。それだけで何時間も粘った。女ともだちと恋愛話しで盛り上がり、ボーイフレンドとの待ち合わせも「さぼうる」だった。本の街神保町という場所柄、まさに学生街の喫茶店だ。壁に白ペンキでの落書きがぎっしりしてるのも、青春真っただ中の思いを受け止めてきた証し。今では「レトロなカフェ」とかいわれているらしいが、私としては「さぼうる」は断固として喫茶店である。粉チーズとタバスコが出てくる山盛りナポリタンも懐かしいなあ。(ニュースキャスタ)

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