1月21日 人生の贈りもの ジャーナリスト 大谷昭宏

朝日新聞2019年1月16日32面:喫茶店から記者の動きも書いた 5年近くの捜査1課担当を終え、社会部の遊軍記者となりました。特定の部署や任務に縛られることなく、状況に応じてどんな仕事もこなさないといけません。独創的な遊軍記者をどれだけ抱えているかで新聞社の社会部の力が試されると言っても過言ではないのです。 《年が明けて1979年1月26日、大事件が大阪市住吉区で起きた。旧三菱銀行北畠支店猟銃立てこもり事件だ》 男が猟銃を手に押し入り5千万円を要求。J警察官とにらみ合いになりました。支店長と行員、警官2人の計4人が殺害され、客と行員30人以上が人質とされたのです。
私も現場に駆けつけ、取材の指揮をとりました。軍隊は嫌いですが、こういう大事件の場合は軍隊式の指揮命令が必要なのです。そして支店が面している交差点の対角線上にある喫茶店を本部とし、そこに仮設電話を設置してもらいました。写真を電送するには電話が必要だったのです。ですが、銀行の中で何が起きているいるのか、入ってくるのは断片的な情報ばかり。すると社会部長の黒田清さんから連絡が入ったのです。「犯人側の動きが良く分からないのなら、こっちの動きを書けばいい」。 取材記者の行動を時系列に沿って逐一記事にしました。「奥さんの弁当が記者のもとに届いた」と私的な話もあります。「そんな話をなぜ載せるんだ」と東京の社会部から文句が出ましたが、黒田さんは押し通しました。「大阪で読売を作るんやない。大阪の読売を作るんや」と言っていましたね。
《籠城42時間後。男は突入した警官隊に射殺された》「あの事件を境に日本の犯罪は変わった」と私の友人で作家の宮崎学さんが力説しています。それまでは生活のため犯罪に手を染める人が多かった。だが世の中から取り残された人々が、成功した人々を嫉妬し、恨みがましく刃を向けるようになったというのです。社会の欺瞞への不満や鬱屈が、男を凶行に駆り立てたのかもしれません。(聞き手 編集委員・小泉信一)

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