1月20日 原発和解 打ち切り相次ぐ 

朝日新聞2019年1月15日1面:ADRの賠償案 東電の拒否続く 東京電力福島第一原発の事故の損害賠償を巡り、昨年以降、住民の集団申し立てを受けた原子力賠償紛争解決センター(原発ADR)の和解案を東電が拒否し、センターが手続きを打ち切り始めている。少なくとも昨年19件、今年は10日に1件あり、打ち切られた住民は1万7千人に上る。住民側は時間や費用がかかる裁判に訴えるしかなく、反発を強めている。
 昨年以降1.7万人分 東電の和解案拒否による打ち切りは2013年から17年まで72件あったが、申し立ては全て東電の身内の同社社員やその家族だった。東電は個人レベルでは多くの和解に応じているが、昨年以降の打ち切りは主に100人以上の住民による申し立てで、国の原子力損害賠償紛争審査会が示した賠償指針を上回る和解案が示されたケースだ。最も規模が大きいのは、全町避難となった福島県浪江町の町民約1万6千人の申し立て。センターは14年3月、指針の精神的賠償(月額10万~12万円)に一律5万円、75歳以上にはさらに3万円を上乗せする和解案を示したが、東電は拒否。昨年4月に和解手続きが打ち切られ、住民の一部は福島地裁への提訴に踏み切った。複数の集団申し立てに対し、センターはそれぞれ数年にわたって東電に和解を促してきたが、東電は応じず、昨年以降、和解手続きを打ち切るようになった。今年に入っても10日、福島市渡利地区の住民が集団で申し立てた件で、手続きを打ち切った。
東電は経営再建策をまとめた事業計画で「和解仲介案の尊重」を掲げるが、大阪市大の除本理史教授(環境政策論)は「指針を上回る賠償を認めると、別の地域でも賠償の増額を求められる恐れがあり、東電は和解案を受け入れることが出来ないのだろう」と指摘。東電広報部は「和解は非公開かつ個別の手続きであって、意見を申し上げることは差し控える」とコメントしている。(飯沼優仁)
同日30面:東電6回拒否「被害者置き去りだ」原発ADRへ和解申し立てた浪江町民 原発事故の損害賠償を巡る住民の集団申し立てで、東京電力が国の原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)が示した和解案を拒否し続けている。拒否を受け、センターは昨年以降、和解手続きを打ち切っているが、東電が和解の成否を決定する事態に、住民は「理不尽だ」と非難している。▼1面参照 福島第一原発から約4㌔離れた福島県相馬市玉野地区。139世帯419人は2014年10月、センターに和解の仲介を申し立てた。山里を開墾した集落で、自然と共生する生活が定着していた。しかし原発事故で一変。幼い子どもと暮らす家族の多くは主自非難し、地域の小中学校は17年春、閉校した。センターは昨年10月、国の指針だった1人8万円に、最大20万円を上乗せする和解案を示した。しかし、東電は和解案を拒否。今も和解手続きが進められているが、東電が受け入れる可能性は低く、センターは手続きを打ち切ることになりそうだ。代表の伊藤一郎さん(70)は「(国の和解案を)悪いことをした側が判断するのはおかしい」と反発する。玉野地区弁護団の平岡弁護士は「本来は被害者が和解案を受け入れるか判断する立場なのに、東電が和解手続きを左右している。世間の関心が薄れ、東電が拒否したすい環境も生まれている」と批判する。
福島県浪江町民の集団申し立ては東電が和解案を6回拒否し、昨年4月に手続きが打ち切られた。住民109人は昨年11月、東電を相手取り、損害倍所の支払いを求めて福島地裁に提訴した。原告団長で元町議の鈴木正一さん(68)は「申し立てから5年以上になる」と憤る。鈴木さんは原発事故の混乱の中、避難し、慣れない生活を送った町民の苦しみを償ってほしいという思いから集団申し立てに加わった。「金の問題じゃない。東電は事故を起こし、国は原発政策を進めた責任を、認めてほしいだけだ」また、町民の高齢化が進み、申し立てをした約1万6千人のうち、町の推計では昨年末までに950人が亡くなった。鈴木さんは「原発ADRは早期解決につながらず、被害者は置き去りだ。この理不尽をいつまで強うられるのか」と話した。(飯沼優仁、奥村輝)
委員任せの交渉 組織的な支えを センター元総括主任調査官の高取由弥子弁護士の話 センターの使命は情報量も影響力も大きい東京電力と、立場が弱い被災者との間に立ち、被災者を早く救済することだ。現状では東電との交渉を仲介委員個人に任せ、組織的なバックアップが不十分ではないか。また、東電がかたくなに和解に応じないのであれば、元となる指針の変更に向け、関係機関を説得する姿勢も必要だ。

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