1月19日てんでんこ 伝える「6」リスナー

朝日新聞2019年1月15日3面:「ハイキングに来たが、帰れない」。放送を聞いた自衛隊が救助に向かった。 スタジオから見える雨風が強くなってきた。2017年8月、西日本に被害を与えた台風5号が岩手県一関市に近づいていた。地元のコミュニティーFM「FMあすも」のパーソナリティー、森英隆(30)はリスナーに呼びかけた。「警報が出れば、緊急放送に切り替えます」 局を出ようとしていていた佐藤嘉信(34)を、社長の岩渕喜一郎(71)が呼び止めた。「明日、頼むね」。翌朝の生番組を担当する佐藤は「3時に出てきます」と応じた。災害の発生に備え、通常より早い出社だ。それまでは前夜の担当者2人が局に待機する。
2012年4月に開局した。災害時の情報提供にと、市が放送機器などを整備し、民間会社が運営する。11年3月の東日本大震災を機に、開局を1年前倒しにした。放送局長の塩釜一常(40)が番組作りから引っ張る。塩釜は、隣の奥州市にある「奥州エフエム」で、立ち上げから関わった経験がある。07年に開局し、その1年2カ月後、岩手・宮城内陸地震が一帯を襲った。20人余りが犠牲になり、大規模な地滑りが起きた。
局の駐車場でリスナーと立ち話をしていたとき、揺れは起こった。スタジオとって返し、「落ち着いてください。身の回りの様子を教えてくさい」と語りかけた。「屋外の灯油タンクが倒れた」「お子さんを抱きしめて」・・。常連のリスナーから次々とメールが届いた。こんな一通があった。「ハイキングに来ているが、帰れない。何人かいる」。市内の焼石岳にいるリスナーだ。そのまま読みあげ、電波に乗せた。市の災害対策本部にいた自衛隊員が聞きつけ、局に連絡してきた。「これからヘリで救助に向かう。危険がないようラジオで呼びかけてほしい」。リスナーから返信があった。「聞いています」
塩釜が心がけていることがあった。リスナーを番組に登場させることだった。「市民と一緒になって伝えていこう」という考えだ。「困ったときは放送局に伝えれば共有できるという意識を、リスナーにもってほしかった。そのためには、通常の番組でリスナーの声をすくい上げていくことが大切だ」 いまFMあすもでも同じ姿勢で番組作りに取り組む。その原点は、阪神大震災の被災地、大阪にあった。(佐々木達也)

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