1月17日 私の東京物語 安藤優子4

東京新聞2018年1月11日28面:あんみつの苦い思い出 「教育だけは盗られない」が口癖だった母。泥棒がはいって物は盗られても、いちど身についたものは盗られないと、事あるごとにいって聞かされた。まさに孟母三還の教えのごとく、中学はすぐ上の兄と同じ、千代田区九段中学校に進学した。母の断固とした方針である。その後、日比谷高校からアメリカへの留学を経て上智大学で学んだので、私の学校ライフは飯田橋、赤坂、市谷、四谷と、だいたい中央線沿線の迎賓館近辺をウロウロすることになった。だから、今でもあの辺りには特別な親しみがある。九段中学校時代は、飯田橋の駅から神楽坂にかけて、用もないのに女子友とあっちこっち道草喰いながらおしゃべりに興じた。なにがおかしかったのか、他愛もない話でげらげら笑い転げ、さぞかし騒々しい集団だったと思う。
もちろん帰り道にお店によることは禁止されていたので、いつも垂涎のまなざしを向けていたのは「紀の善」という甘味屋さん。育ち盛りの女子たちにとって「あんみつ」は想像しただけでもん絶もの。素通りするのがどれほどつらかったか。お店の前にぐずぐずと団子状態になっていたセーラー服軍団は、私たちです。けっきょく、誰も校則を破るほどの勇気? もなく、未練がましい足取りで飯田橋駅に向かって歩いていく。ふと、甘味屋さんの看板を見るとそんな光景がよみがえります。(ニュースキャスター)

 

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