1月13日 新聞を読んで 水野剛也

東京新聞2018年1月7日5面:ニュースの感度を磨け ニュースの選択には巧拙があります。そもそも、「何がニュースか」には正解がなく、だからこそ新聞社の感度が問われます。個人的に期待するのは、扱いの大小とは関係なく、他のメディアにはない着眼点、漠然と感じていた疑問・関心にこたえる詳報、独創的なテーマの発見、です。「震災6年『家計赤字』倍増」(昨年11月29日朝刊)には、震災・原発報道を重視する本紙らしさが見られます。被災地域の約400世帯を対象に非政府組織が実施した調査結果を伝えたものですが、「これは見過ごせない」という問題意識がなければ埋もれたままだったでしょう。
翌日のインタビュー記事も同じです。女性として22年ぶりに東京副知事に起用された猪熊純子氏を写真付きで紹介しています(同30日都内版、唐沢裕亮記者)。とかく耳目を集める小池百合子知事ではなく、彼女を支える黒子役にあえて光をあてたセンスが秀逸です。地方、もやもやを解消してくれた例として「コンビニ外国人店員奮戦記」(12月5日TOKYO発)があります。ここ数年、ぼんやりと感じていたが確証を持てていなかった日常的な変化を見事に言語化しています。私が勤務する大学前の店では、東南アジア出身と思われる従業員が宅配便の「着払い」をテキパキと処理してくれます。そうなるまでの経緯・背景・苦労が写真付きで実例とともに解説され、とくに首都圏では外国人の雇用が今後も確実に増えていくことまでわかります。「かゆいところ」に手が届いており、「そういうことだったのか」と腑に落ちました。
独自テーマで感心したのは2020年東京五輪・パラリンピックの大会マスコット3作品について全国の小学生100人にアンケートした「市松模様の『ア』案が人気」(12月10日朝刊)です。最終候補発表の7日から始動し、ニュースを「創りだして」います。フットワークの軽さと実行力に「さすが地元紙、やるな」と思いきや、共同通信の記事でした。惜しい! 本紙の独自ネタだったら、文句なしのきれいな一本だったのに。
最後に、「どこがニュースなの?」と疑問に感じる場合もあります。典型例として有名なスポーツ選手が「練習を再開した」「軽く汗を流した」「キャッチボールをした」は無意味では? 歌手がリハーサルをした、作家が原稿を直した、と同じことでしょう。世の中には、報道「される」より「されない」情報が圧倒的に多く存在します。ネットと違いページ数という制約があるからこそ、取捨選択の価値観が新聞の武器となります。先入観にとらわれない、磨き抜かれたニュース感覚を期待します。(東洋大学社会学部教授)*この批評は最終版を基にしています。

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