1月12日 減る人口 細る「公」の担い手

朝日新聞2019年1月8日2面:ー深刻な人手不足 自衛隊も地方議会も 「助けを求める人がいる限り、どこでも出かけます」。アナウンスが響く中、自衛官の制服を着て、子どもたちが敬礼するポーズをしている。茨城県小美玉市の百里基地で昨年12月2日に催された航空祭には、4万人が訪れた。迷彩柄のズボンをはいた少年に、若い女性航空自衛官が声をかける。「いくつ?」「12歳です」第2次世界大戦の戦闘機をネットで見て、自衛官に関心があるという。
「ずーっと人が足りてないから、きっとなれるよ」この日は10枚ほど、入隊のための志願書が用意されていた。だが、志願者はいなかった。「ここ1.2年で全省的に人材不足が極めて深刻な問題だと共有されてきた」と防衛省人材育成課の松浦紀光・統括班長は語る。同省が募集対象としていた18~26歳の人口は、ピークの1994年に1700万人いたが、今は1100万人と4割減った。昨年、国内で生まれた日本人の子は約92万人。統計を始めた1899年以降で最少だ。若い世代が減り続ける中、年間約1万数千人を採用することは容易ではない。任期付きの自衛官候補生の採用は4年連続で予定人数を下回った。昨年10月には採用年齢の上限を28年ぶりに改めて32歳にし、定年の引き上げも検討している。「できるだけ入り口を広げる。全員が全員、体育会系である必余はない」と松浦班長。体格指数(BMI)の上限を、「太り気味」の27程度から「肥満レベル」の30程度とする試行も、すでに始めた。
民主主義にも影 次代に重荷 「立候補は何人?」「8人。4人足りねえ」12人のうち5人が引退し、その時点で新顔は1人。「お父さんも出てがんばれば?」と後押しした妻はその足で、役場から必要書類をもらってきた。収穫して箱に詰めたリンゴを畑に放置したまま、家族で協議して決めた。役場に着いた時、締め切りまで1時間を切っていた。無投票当選した9人全員が60代で、平均年齢は66歳。欠員が定数の6分の1を超え、再選となった。選挙時に議長を務めていた加藤生さん(69)は言う。「そもそも、母数も少なくなってきてっから」。村の人口は昨年12月1日現在、7454人。30年間で約1千人減った。22人だった議員定数は90年に18人、2002年に16人、06年には12人に。「議員が出ない地区の声が届かない。これでは民主主義が育たない」。再選挙は今月27日。新たに立候補を表明した村民はいない。
「平成の大合併」が落ち着いた07年末、町村議員は全国で計1万3849人いたが、10年で2割減った。競争率は下がり、無投票当選者の割合は13.2%あら21.8%へ増えた。17年に「町村総会」の設置を検討して話題になった高知県大川村議会(定数6)は現在、地方自治法が定める「兼業制限」を緩めようと条例化の議論を進める。「選挙区の人口が数十万人の議会と、400人の議会とを同じ法律でくくるのはおかしい」と朝倉慧議長(79)は話す。
12月下旬、北海道から中国地方までの若手地方議員が都内に集まった。「必勝 選挙セミナー合宿」と銘打ち、政治を志す若者に選挙の戦い方を教えるのが目的だ。「演説は1秒に5音、何だか元気そうな人がいると通り過ぎる人に思ってもらえれば成功です」。講師役を務めた岐阜県垂井町議の太田佳祐さん(33)は、4年前に29歳で初当選した。調べてみると、同時に全国で当選した20代の町村議はわずか9人、30代を入れても120人で全体の3%以下だった。これでは若い世代の意見が地方政治に反映されるはずがない。
主催した「全国若手市議会議員の会」の奥山豊和会長(38)は、人口減少を恐れる秋田県の横手市議だ。「他の自治体と人口を奪い合うのは意味がない。若い議員が横のつながり連携することが必要だと思う」議員たちの話を熱心に聞いていた20代の会社員は、北関東の郷里の町から立候補するかどうか、悩んでいた。上の世代が牛耳る地方自治体を、自分たちの世代が変えなければいけないことは分かっている。「でも、議員報酬が月に十数万円では暮らししていけません」
行政サービスを支える地方公務員は、警察や消防、教員などを含めて全国で274万人。自衛官や官公庁職員などの国家公務員は58万人に上る。日本の総人口のおよそ40人に1人だ。人口減少の本質は「国民」が減ることにある。出生数が減り、若い世代が減れば、行政や国防、民主主義を支える人材もやせ細る。老いる国、エイジングニッポン。対策のために残された時間も人工も、砂時計のように減り続ける。(藤原学思、編集委員・真鍋弘樹)

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