1日 私の十本 吉永小百合【21】

東京新聞2017年7月30日2面:北のカナリヤたち(下) 吉永さんの116本目の出演映画になった坂本順治監督「北のカナリヤたち」(2012年)での話題の一つは、森山未来さんや宮崎あおいさんら、人気若手俳優たちとの共演だった。吉永さんが扮する小学校の先生、川島はるは20年前、北海道の離島に赴任し、分校の4~6年生、6人の児童の担任になる。だが、ある悲しい出来事が起き、はるは島を追われるように出て行く。その後、東京で図書館の司書として働いていたはるの前に、刑事が現れる。分校の教え子の一人が殺人事件を起こしたとというのだ。それがきっかけで、はるは、成人した教え子たちと再会する。
大人になった教え子を演じたのが、森山さん、宮崎さんに加え、満島ひかりさん、小池栄子さん、松田龍平さん、勝地涼さんの計6人だった。撮影当時、最も年上の小池さんは30代になっていたが、ほかの5人は皆、20代後半だった。
「私は28歳のとき、結婚という激動がありました(笑)。20代後半から30代前半というのは、いろんなことがある時期だと思いますが、6人とも皆、きちんと自分を持っていて、ユニークな演技方法や生き方を持っている人たちでしたね。私の若い頃に比べて、多様性があると感じました」
若手のお手本心掛け いずれも主役級の6人が「普通の作品の出番に比べて6分の1」しか登場しないのに、吉永さんとの共演に熱い気持ちをぶつけてきてくれたことにも、感激した。「ひかりちゃんが撮影前にわざわざサロベツ原野を見に行ったり、栄子ちゃんが旋盤工の仕事を勉強したり、未来君が出番より何日も前に島に入ったり。いくつもエピソードがあります。未来君は、1人で島の中を探索していたら、あやしい人と間違われたそうですけど(笑)」もちろん、吉永さんの側にも、それなりの心構えがあった。
「映画の中で、煙突のはしごに登るシーンがあるんです。命綱はもちろん付けていますが、結構手の力がいるんで、撮影に入る前は、腕立て伏せを毎日30回やっていました。それから、寒い場所での撮影が多かったので、本当に寒い所に行った時には、『寒い』という言葉を言わないよう気を付けました」
吉永さんはかつて、「動乱」(1980年)の北海道・サロベツ原野での撮影で、初共演した高倉健さんが昼食時、車の中に入らず雪原で食事し、緊張感を持続している姿に、感動したことがあった。今回も同じサロベツ原野でのロケがあったことで、そんな記憶がよみがえったのだろう。
「メインの舞台になった礼文島や利尻島の寒さは、口で言えないくらいの厳しさなんです。大人になった教え子を演じた6人は、めちゃめちゃ寒い中も、せりふもきちんとしていて、本当にプロフェショナルな人たちでしたが、過去のシーンで出ている子役の6人はまだ子どもですからね。私が『寒い』と言ったらそれで終わっちゃう。皆を励ましてやらなきゃいけないと思いました」
中学生だった13歳の時に、映画デビュー。子役からアイドル時代を経て、さまざまな体験をしてきた吉永さんが、今は大先輩として、全員のお手本であろうとしていることがよく伝わってくる。「日活時代、浜田光夫さんと共演した『泥だらけの純情』(63年)のラストが雪の中の心中シーンで、夢中に演じているうち足が凍傷寸前になってスノーボートで運ばれたことがあります。女優という仕事は、暑いよりは寒い方が耐えられるのかもしれませんね」
(聞き手=立花珠樹・共同通信編集委員)

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